「裸婦の中の裸婦」文藝春秋
こちら、1986年3月から1年間の予定で「文藝春秋」に連載されたものが収録されています。
美術に詳しいおじさんと、そうでもないおじさんと、女子大生風お姉さんが、裸婦像について、なんだかかんだ話をするという、とても楽しい本です。でも澁澤龍彦らしい批評もちゃんと盛り込まれています。
著者が澁澤 龍彥・巖谷國士になっていますが、お二人の対談ではなく、連載途中に澁澤 龍彥が入院したため、最後の3編のみ巌谷國士さんが執筆しています。
その経緯が「あとがき」にありますが、なかなか泣けます・・。
1987年8月5日に澁澤 龍彥は亡くなりますので、「高丘親王航海記」と共に、遺作の一つとなりました。
当然図版もすべて裸婦なので、ご紹介するのに困るのですが、中でも一番困るかもしれないこちらを・・。
眠るヘルマフロディトス Musée du Louvre
「-なにしろ一歩あやまれば、たちまちグロテスクに堕するような主題だからね。
-いや、おれはグロテスクだとはちっとも思わないな。おれの勝手な思いこみかもしれないが、両性具有というイメージには、なにかこう、失われた全体を回復しようとする人間の本質的なあこがれが投影されているような気がするのでね。」
「『両性具有の女』眠るヘルマフロディトス」-澁澤 龍彥
「両性具有の女」って不思議な言葉ですね。
この像のレプリカは世界中にいくつかあるそうですが、こちらの写真はルーブル美術館のものです。
私も、確かこの本を読む前だったと思うのですが、ルーブル美術館で、この像を観ました。
とても美しく印象的なものでした。
こちらの本、現在は河出文庫になっています。
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