三島戯曲は、ほぼ原作通りに上演されてます。
「黒蜥蜴」もそうですが、古さを感じさせないよう台詞や演出は工夫されているそうです。
以下は私が気付いた原作と違った部分です。
黒蜥蜴から宝石商のお嬢さんを守る力自慢の用心棒の台詞
原作:「そうだよ、俺だって三好清海入道ぐらいにはなってたろうな」
2015:「そうだよ、俺だって宮本武蔵ぐらいにはなってたろうな」
三好清海入道は、真田十勇士の一人でしたっけ?
確かに宮本武蔵の方が誰でもピンとくるかもしれません。
ひな夫人がお手柄を立て、黒蜥蜴からご褒美をもらう場面
原作:ひな夫人「でもこのサファイヤは可愛い甥っ子にやってもよございましょう。私のたった一人の身寄りで、南千住にお煎餅屋を開きたがってるんでございますよ。」
黒蜥蜴「うまく現金に換えてやるならいいでしょう。サファイヤがお煎餅に化けたりするのは、悪い事じゃありません。」
2015:ひな夫人「でもこのサファイヤは可愛い甥っ子にやってもよございましょう。私のたった一人の身寄りで、北千住にたこ焼き屋を開きたがってるんでございますよ。」
黒蜥蜴「うまく現金に換えてやるならいいでしょう。サファイヤがたこ焼きに化けたりするのは、悪い事じゃありません。」
ここは、笑う場面なので、何度も観ている方も新鮮なように、変えられるんですね。
宝石商に脅迫状が届いたとの電話を明智小五郎が受ける場面
原作:それで、なんと書いてあります、その脅迫状に。ええ、かまいません、電話口で読んで下さい。部下に速記させますから。
2015:それで、なんと書いてあります、その脅迫状に。すぐにFAXで送って下さい。
そりゃそうですね。
「Cloudで共有をかけて下さい」だと行き過ぎですしね。
明智小五郎が黒蜥蜴を尾行していた事を明かす場面
原作:「お察しの通りだよ。あのとき君が油障子から顔を出しさえしなければ、こんなことにはならなかったかもしれないぜ」
2015:「お察しの通りだよ。あのとき君が窓から顔を出しさえしなければ、こんなことにはならなかったかもしれないぜ」
確かに、油障子見かけませんよね。
美輪明宏さん、故三島夫人からこんな風に言われていたそうです。
「ねえ丸さん、くれぐれも『なんだか古臭いね』と言われない様に時代に合わないおかしな所は手直しして気を配って演出して下さいね。」
この言葉は、今回も前回のパンフレットにも書かれています。
他の三島戯曲は時代設定がはっきりしたものが多いですが、「黒蜥蜴」はその辺りもミステリアスに演出されています。