昭和29年「芸術新潮」に、三島由紀夫は「ワットオの《シテエルへの船出》」を執筆しています。
Pélerinage à l'île de Cythère Jean-Antoine Watteau 「三島由紀夫の愛した美術」
その中に、
「サウトマンの版画『魚類の奇跡的牽引』から取られたといわれる若い裸形の舟子の姿が、光の中にたかだかと右腕をかかげ、恋の島への航海の水馴れ竿をすでに水底に突き立てている。」という表現があります。
この舟子さんですよね。
Pélerinage à l'île de Cythère Jean-Antoine Watteau (部分)
「魚類の奇跡的牽引」て何??
おそらくこの版画の事ではないかと思うのですが・・?
タイトルは
「Ixion embraces a
cloud which at the order of Jupiter took the shape of Juno.」
もしくは
「Ixion ambracing
the cloud Nephele, which took the shape of Hera.」
となっています。
これまた、不思議なタイトルでローマ神がたくさん登場しているようですが、状況はわかりません・・。
Pélerinage à l'île de Cythère Jean-Antoine Watteau (部分)
ここにご紹介している「シテール島への船出」ルーブル美術館所蔵のものです。
同じ主題の絵がもう一枚 シャルロッテンブルク城にも所蔵されています。
こちらは、舟の帆が大きく描かれて、キュピドンもかなり増員されています。
The Embarkation for
Cythera
また、この絵は「シテール島の巡礼」とも呼ばれ、シテール島に向かう船出の場面ではなく、この絵の場所がシテール島で、そこから帰還する場面が描かれているという説もあります。
この本の中で、帰還を描いたものではないかとの質問に、宮下規久朗さんはこのように語ってらっしゃいます・・。
「いや、そうとは限りません。愛の島から帰ってきてしまったら、お話は終わりじゃないですか(笑)。やはり、これから出かける方が絵になる。」
帰還説反対派でいらっしゃるようですね。
「三島由紀夫の愛した美術」 宮下規久朗 井上隆史
「実際この画家の、黄昏の光に照らし出された可視の完全な小世界は、見えない核心にむかって微妙に構成されているようにも感じられる。この画家の秘められた企てに、画中の人物は誰一人気づいていない。気づかれないほどに、それほど繊細に思慮深く、画家の手は動いたのだ。その企図がわずかにうかがわれるのが『シテエルへの船出」なのである。」
こんばんわ! みっちです。
返信削除三島の芸術的嗜好、興味がありますねぇ。(嬉)
昭和29年「芸術新潮」寄稿の話は初めて知りました。
さて記事中のサウトマンの版画『魚類の奇跡的牽引』ですが、これはメトロポリタン美術館所蔵のMiraculous Draught of Fish(Pieter Soutman)ではなかろうか、と思います。
以下URLです。(先頭のhを省略しています)
ttp://www.metmuseum.org/Collections/search-the-collections/386324?rpp=60&pg=1&rndkey=20130726&ft=*&where=Netherlands&who=Peter+Paul+Rubens&pos=20
みっち注:draughtを『牽引』と訳しているのですが、これは『漁獲』の方が良さそうですね。(笑)
みっちさん! またまたありがとうございます。(謝)(涙)
返信削除まさにこれですね!牽引も、漁獲とするとわかりやすいですね。
三島の美術嗜好は独特ですが、なかなか興味深いです。