こちらは、1999年にコンピュータ・グラフィックスによって再現された「最後の晩餐」です。
この復元図を見て最初に持った違和感は、中心下部のキリストの足の部分です。
これまでのイメージでは、ここには、なにやら石版のようなものがあるように思っていました。
「最後の晩餐」コンピュータ・グラフィックスにより再現図
この絵はもともと、ミラノにあるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂の壁画として描かれたもので、その部屋は普通に食堂として使用されていたんですね。
そして、1652年には、この部分をくりぬき、食堂と台所の間を出入りするための扉を設けたそうです。
「最後の晩餐」 修復前
この白い部分はくりぬかれた跡なのですね。
当時は当たり前だったのかもしれませんが、今から思うと信じがたいです。
「最後の晩餐」 修復後
この足元は実に雄弁で、上半身同様、キリストの静かな姿と、弟子達の騒然とした様子が描かれています。
この部分が描かれているのといないのでは、全くこの絵の全体感が変わります。
「最後の晩餐」コンピュータ・グラフィックスにより再現図
「この修道院の処置は信じがたいものだが、当時この晩餐図はすでに鑑賞に堪えない状態になっており、とくに画面の下のほうは真っ黒で、戸口を設けてもたいした影響はないと判断されたのだろう。」
-片桐頼継